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カテゴリ:教員コラム

昔は読み、書き、そろばん

昔は習い事といえば、読み、書き、そろばんでした。

では今は何でしょう。

長い間教育に関わってきた経験からいうと、今は読み書き、そろばん、英語ではないでしょうか?

今は、何か読んで理解したら、必ず自分の考えをまとめて表現することが求められています。レポートを書いたりプレゼンをしたりして、入力(学ぶこと)と出力(まとめて発表すること)が一体になっています。だから、本を読むだけですませるのではなく、その本の中で気に入った部分をノートに書き出したり、感想を書いてみたりすると、高校や大学、社会人になってずいぶん役にたつと思います。(自分も本を読んでいるとき、気にいった部分や思いがけない部分に線をひいて、それをあとでノートに書き写していました。)

本は今、売れているそうです。時間をつぶすのに読書ほどいいものはありません。まずは、自分がおもしろそうだなと思う本を読んでみましょう。1冊読んでおもしろかったら、その作家の別の本を読むのはとてもいいことです。そうやって、どんどん興味の輪を広げていきましょう。こんな読み方もあります。中国の「三国志」が好きなひとは多いでしょう。「三国志」を読んだら、日本の戦国時代の本を読んでみる。今、NHKの大河ドラマは「麒麟がくる」です。明智光秀の話ですが、織田信長や斎藤道三に興味があるなら、司馬遼太郎の「国盗り物語」を読んでみる、というように少しずつ範囲をひろげていくのです。一つの作品や作家を中心に、関連するものを読んでいく、読み終わったら、200字ぐらいの感想を書いておくと学校の授業のかわりにもなり、十分おつりもくると思います。早い時期からやりはじめると、いっそう効果があります。何かとじっくり向き合う時間は大切です。そこから、子どもの未来が見えてくると思います。

そろばんと英語については、また機会があれば書いてみたいと思います。

追伸 音楽の先生に、「大切なもの」を弾いていただきました。学校からのお便りの臨時休業関係のフォルダに入れておきました。歌ってみてください。

こんな時だからこそ、本を読もう!

今、本屋さんに行くと県内の高校がオススメする本を紹介するコーナーがある。新入生への課題図書だ。その中に「ポーツマスの旗 ー外相・小村寿太郎ー」という本がある。作者は吉村 昭という人で、奥さんが福井市出身の津村節子さんなので、本県にもゆかりがある。歴史の授業で習ったと思うが、日露戦争後のポーツマス講和条約締結の交渉を行った中心人物が小村寿太郎である。この本を読んでいくと、多くの人が戦争に巻き込まれ、幸せな人生を奪われていくが、その中で強く生きていく人の姿が描かれている。今回の新型コロナウイルスのせいで、ついさっきまで、そこにあった幸せな学校生活が奪われてしまったと思っているかもしれない。なぜ、自分たちの時に、と恨んでいるかもしれない。でも歴史を振り返ってみると、こんな出来事は何度もあって、困難に負けず、一生懸命生きようとした人がいたことは、例えばこの本を読むとよくわかる。本を読むということは、人の生き様を知ることであり、自分が生きる意味や生きる勇気を学ぶことになる。こんな時こそ、苦難に負けなかった人について書かれた本を読んでほしい。オススメはいくらでもある。でも、いつか必ず読んでほしいのは、司馬遼太郎の「坂の上の雲」と「竜馬がゆく」だ。

 

好きこそものの上手なれ!

将棋界の天才といえば、羽生善治さんが浮かびます。その羽生さんは「ずっとやっていられる」というのが才能だと言います。そのことについて述べた文を紹介します。

確かに将棋は才能の世界で、奨励会に入ってくるような子どもはみんな、普通の子に比べて才能がある。羽生さんがそうであるような、明らかな天才だっているわけです。

でも、その子どもたちがプロになって活躍するか、伸び悩んでやめてしまうかの分かれ目は生まれつきの才能にほぼ関係ない。1日8時間、毎日将棋の勉強をする生活を何十年続けられるか、この一点にかかっているというのが羽生さんの話でした。

結局、好きだから続けられるんですよね。羽生さんも将棋のことを考えるのが楽しくて、30年もの間、対局があってもなくても、どんなに疲れていても、毎日5〜6時間は将棋について考えているというんですよ。

「才能って何かっていったら、結局続けられるかどうかだと思います」という羽生さんの話で、僕は「ああ、本当に将棋が好きなんだな」と思いました。 

世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術    著者 水野 学 山口 周 朝日新聞出版 2020年

追伸 新1,2年生にワークを配付しています。早めに取りに来ていただけると大変助かります。よろしくお願いします。

 

オススメの本(第2回)

世界のたね  真理を追いもとめる科学の物語  アイリック・ニュート 著  猪苗代英德 訳  NHK出版 1999年

 子供向けの本には大人にとってもいい本がたくさんある。新型コロナウイルス感染拡大のことを考えていた時、この本を思い出したので、ちょっと長いけれども、引用する。

1348年から1350年にかけてヨーロッパでは黒死病、ペストという伝染病が流行し、ヨーロッパの全人口の三分の一が命を奪われ、ヨーロッパ以外の国々でも何百万もの人が死んだ、と述べて次の文が続く。 

「この病は人を選ばなかった。貧しい人びとも裕福な人びとも、おなじようにこの病におかされた。医者たちは、患者がつぎつぎに死んでいくのを、ただ黙って見ているほかなかった。いくら司祭たちが神に祈ったところで、まったくむだだった。

ほんの短期間のあいだに、まわりの人の三分の一が死んでいくという状況がどういうものなのか、きみもちょっと想像してみるといい。きみの町の住民の三分の一が、クラスメートの三人に一人が、家族の三人に一人が、いなくなってしまうんだ。きみなら、そのあとどうやって生きていく? そんなすさまじい災厄のあとに、生き残った人たちはなにを考えていたんだろう? 昔はメディアも世論調査もなかったから、当時の人たちの行動を知ることはむずかしい。でも、おおかたの人は、たぶん、神への信仰を失ったんじゃないだろうか。生涯の大部分を教会に捧げてきた人たちに破局が訪れたとき、助けてくれる神はどこにもいなかったんだから。

その思いは、黒死病がおさまったあとのイタリアで起こったできごとに、少なからず反映しているだろう。大災厄によって社会は完全に麻痺し、多数の農民や労働者がいなくなり、孤児は町にあふれ、修道院や大学は優秀な学僧や学者を失ってしまった。けれども、数十年後、イタリアは復興したんだ。そして、一つの革新的な運動が起こった。」(教科書で習うルネサンス運動の前にはこんなできごとがあったのだ。)

私たち人間は、何度も大きな危機を乗り越えてきた。歴史は、そのことを教えてくれる。科学の歴史に興味があるなら、この本はオススメだ。

 

集中力を生むために!

NHKに羽佐間正雄さんという名スポーツ・アナウンサーがいた。かつて圧倒的な強さで、帝王と呼ばれ、史上最高のゴルファーと称されたジャック・ニクラウスさんへのインタビューがおもしろいので紹介する。

 

そこで、私は集中力を生むためには何が重要かを質問した。

「それは努力です。」

日本人とおなじようなことを言うなと思いながら、私はさらに聞いた。

「二番目には?」

「二番目に必要なのは、努力ですよ」

「では、三番目は?」

「三番目は努力ですね」

「では、四番目はなんですか」

やっとニクラウスは答えを変えた。

「それは、みなさんが想像もできないような努力です。人が考える二倍も三倍もの努力です。それだけの努力を積み重ねてきたら、そこではじめてどんな人もどんなことに対しても、自信のようなものが芽生えてくるはずです。その自信が芽生えたあとに、初めて集中心がやってくるんです。自信という裏づけがあって、初めて集中できるようになるんです。

努力を支えるもの、それは最終的には強い志に他ならない。(「実力とは何か」1987年)

学校は花でいっぱいです。

年々歳々花相似たり  (毎年毎年、花は変わることなく咲くけれども)

歳歳年々人同じからず (毎年毎年、人の顔ぶれは変わっていく)

という、中国の詩を思い出します。